
Alexander O'Neal / Criticize (Remix)
夜の静寂に溶け込む、洗練された都会派R&Bの極致。80年代後期、アーバン・コンテンポラリーの完成形とも言えるサウンドを提示したAlexander O'Neal。その絶頂期を象徴するアルバム Hearsay からシングルカットされた1曲 Criticize は、当時のクラブ〜ラジオ双方で圧倒的な存在感を放った楽曲ですが、今回レコメンドするRemixはその魅力をさらにフロア仕様へと昇華させた極上の12インチです。
ネオンに照らされた都会の夜を思わせるイントロ
聴いた瞬間、まず耳に飛び込んでくるのは華やかに広がるフィメールコーラスと、きらびやかに煌めくシンセサイザー。まるでネオンに照らされた都会の夜景をそのまま音に落とし込んだようなイントロは、一瞬でリスナーをその世界へ引き込みます。そこに重なるのが、贅肉を削ぎ落としたタイトなドラムと、じわりと身体を揺らすグルーヴィーなベースライン…派手に音を詰め込んでいるワケではないのに、ひとつひとつの音が絶妙な距離感で配置されるコトによって、実に奥行きのあるサウンドを作り出しています。この「ハデさではなく空気で聴かせる」という感覚こそ、80年代後期の洗練されたR&Bが持っていた魅力であり、このRemixの核になっています。
Steve Hodgeが約7分のフロア仕様へ再構築
Remixを手がけたSteve Hodgeは、Jam & Lewis関連作品で培った職人的なミックスワークを存分に発揮し、オリジナルの持つ「静と動」のコントラストを保ちながら、よりフロアで機能する構造へと再構築。約7分に拡張された展開の中で、ブレイクやパートごとの抑揚が緻密に設計されており、ヴォーカルをしっかり聴かせながらも、ビートとベースだけでグルーヴをキープする余白が随所に作られています。単純にオリジナルを長くしただけではなく、DJが次の曲へつなぐための時間や、フロアのテンションをコントロールするための「間」まで含めて設計されているように感じられる。このあたりは、まさに12インチRemixというフォーマットが最も輝いていた時代ならではのサウンドでしょうね。
ナニより魅力的なAlexander O'Nealのヴォーカルっ!
そしてナニより、この楽曲のメインとなるのはAlexander O'Nealのヴォーカルっ!深くスモーキーでありながらも透明感を失わないその歌声は、都会の夜に静かに寄り添うように響き、楽曲全体に大人の色気と余裕を与えています。力任せに歌い上げるのではなく、低いところではじっくりと抑え、必要な瞬間だけ感情を前へ押し出してくる。この絶妙なコントロールが実にカッコイイ。リリックでは「批判ばかりする相手への葛藤」をテーマにしつつも、決して感情的になりすぎない冷静な語り口が印象的で、その抑制された表現が逆にリアルな人間関係の機微を浮かび上がらせます。ダンス・トラックとして身体を揺らしながらも、歌を聴けばしっかりとドラマが存在する…この両立もCriticizeの強さでしょう。
ミネアポリス・サウンドが生んだ漆黒のファンクネス
プロデュースはThe Time出身であり、Jam & Lewisとも深い関係を持つJellybean Johnson。ミネアポリス・サウンドの洗練されたファンクネスをベースに、それを都会的なR&Bへと昇華させた手腕は見事の一言です。タイトなドラム、シンセによる華やかな装飾、腰にくるベース、そしてAlexander O'NealのSoulfulなヴォーカル…それぞれの要素だけを見れば80年代R&Bではお馴染みのものですが、その組み合わせと音の配置によってCriticizeだけの独特な色気を生み出している。明るく華やかなDance Musicでありながら、その奥にはドコか黒く湿ったようなFunkの感触がある。この「漆黒のファンクネス」があるからこそ、単なる80s Popとして終わらず、今なおDJがプレイしたくなる強さを持っているのでしょうね。
12インチで味わいたい静かな熱量
リリースから35年以上が経過した今でも、このRemixが持つ「漆黒のファンクネス」と「アダルトな洗練」は全く色褪せていません。むしろ現代のR&BリスナーやDJにこそ新鮮に響くであろう、時代を超えた完成度の高さを誇ります。そしてこの曲は、ぜひ12インチで少し音量を上げて聴いてほしい1曲でもあります。ヴォーカルの艶やかさだけでなく、タイトなキックの輪郭、ベースの太さ、シンセが左右に広がっていく空間まで感じてみると、このRemixが単なるバージョン違いではなく、フロアで鳴らすために作られたサウンドであるコトがよく分かるはずです。ハデさだけではない、内側から滲み出るグルーヴっ!針を落とせば、その静かな熱量に気付くはずです。


